« 車お宝話(97)「ZZ」の英国生産を決定する! | トップページ | 車お宝話(99)ポール・フレール氏と「ZZ」 »

2008年10月29日 (水)

車お宝話(98)英国工場で「ZZ」を生産する!

      

いよいよ、あと2回で100回に到達してしまうから、この「ZZ」の話は、一旦
切り上げなければならない・・・・

約束したように「STORY OF TOMMYKAIRA」なるタイトルで1987年から順
に開発車の動機やエピソードを、僕が憶えている範囲で書こうと思っている
からだ!

そこで今回は今まで余り触れていない、英国工場のことを紹介しようと思う。

そして、お宝話(99)では延び延びになっている「ポールフレール」氏の試乗
の模様を、当時の資料を基に書き綴って、区切りをつけようと思っている・・!

・・・それでは早速、英国で生産する事を決断した理由をお話しよう・・・・

理由は、我が国の自動車に対する規制が、改造車を造って実績を上げても、
乗用車メーカーとして、簡単には認められない事にある。

そこには行政や、業界の申し合わせといった、高いハードルがあるのだ・・!

メーカーとして認知されるには、運輸省(当時)による、「型式認定」を受ける
必要があるが、これには莫大な費用と、時間が掛かり過ぎてしまう・・・

そのうえ、「ZZ」の個性であるデザインや、折角の特徴であるキャブレターが、
衝撃吸収衝突テストや、その他の事で、大きく変更せざるを得なくなる・・・

それでは「ZZ」を造った意味そのものが、大きく揺らいでしまう・・・!

だが、当初から海外生産と国内生産の両方を検討してきた事で、海外と国内
のメリット、デメリットを冷静に判断する事ができた。

その点英国の産業育成政策は日本と違い、小規模企業に対する規制が非常
に小さく、安全性に対するテストも、日本に比べて簡単で、時間も短かくて済む。

当然費用も少なくて済むから、クオリティの高いクルマを、安く提供できる・・・
現に発表当時、ルノースピダーや、エリーゼにも優るクオリティと評価された!

英国生産のもう一つの大きなメリットは、モータースポーツが国技に匹敵する
ほどの高い人気を持ち、スポーツカーの発祥の地でもあり、自動車メーカーが
揃う本場であるという事だ。

進出先のノーホークは名門ロータスの土壌があり、そこに無数の下請け工場
があり、点在している地元のレースパーツ・メーカーを探すのは容易だ・・・・・!

そのうえ技術者も豊富で、スポーツカーを造るのにこれほど適した土地はない。

少量生産することのノウハウには事欠かないし、何より土地が安いからコスト
が低い、本当に宝の山とはこの事だと・・・!

そんな訳で英国生産をしない理由は見つからないのだが、唯一つの気掛かり
は品質・・・そうジャパン・クオリティを貫けるのかと云うことだ・・・!

このジャパン・クオリティが一番肝心なところで、最重要項目と言える・・・・!

・・・この問題解決には2人の重要人物の活躍がある。

一人は開発責任者の解良君で、日本で3台造ったプロトタイプの内1台を英国
に送り、解良君自身もノーホークに住み込んで、組み付けが順調に軌道に乗る
まで、付きっ切りで指導したのだ・・・!

もう一人の人物は、「トミタオートUK」の社長をお願いした、鮒子田 寛氏だ!

そう、若干20歳でトヨタのワークスドライバーとして大活躍をした、鮒子田君
で、解良君とは旧知の仲だし、僕も昔からの友人だった・・・・・

当時、トムスGBの社長でもあった彼は、すでに永くノーホークに住み付いて、
工場を運営していた・・・・・

その鮒子田君の家に、解良君が居候する形で、このジャパン・クオリティを、
確立して行った・・・!

下請けのレースパーツ・メーカーなど、探す必要もないぐらい精通しているし、
「ZZ」の組み付けをする技術者も、部品を管理するベテランも責任者のベン・
クロフォード氏も皆、アッという間に決まってしまった。

・・・・・有難いことに、ここでもまた友人に助けられている。

簡単にクルマ造りのコンセプトと手順を紹介しよう・・・・・

まず大事なコンセプトは、「ZZ」を10年以上、安心して乗れるクルマにする事。
日本人が造ったクオリティを継承し、大メーカーに引けを取らない車にする事。

それにはエンジン、ブレーキ、ステアリングコラム、重要保安部品等は自動車
メーカーが造った物を使用し、それ以外の物は、信頼のおけるレースパーツ・
メーカーや、シャーシー・コンストラクターなどに依頼することだった・・・!

大物のアルミモノコック・シャーシーは、あの、オリジナル・ロータスセブンや、
ロータス23Bなど、ロータスの名シャーシー・コンストラクターとして名を馳せた
「アーチモータース」が担当している・・・!

この時の「トミタオートUK」のイギリス人ワーカーは7人で、1台の「ZZ」を組上
げるのに『70時間』を要した。

広い工場は大きく分けて3工程に別れているが、その横に整理された部品の
棚が整然と並ぶ、これは生産管理の専門家ベン・クロフォード氏の得意技だ!

10292_2

まず最初はエンジンのセクション・・・!

日産自動車との契約によって、オランダ日産から、補気類のない裸の状態の
エンジンが、この工場に送られてくる。

このSR20型エンジンに、京浜気化器から送られてきた、CR4連キャブレター
を装着、その他の補気類を付けて次のセクションへ・・・・・

次はシャーシーの組み付けセクションで、エンジンや、足回りなど、ボディ以外
の大方のものを組み付ける・・・・・

10293

最終セクションはボディシェルを被せる作業で、この後完成品検査をし、最後

10294
は実際に走行テストを1台1台行い、各部のチェックをして完成となる。

ここまで徹底的にチェックするから、日本に入荷しても、ほとんど手を入れる
必要がなかった・・・!

10291

軌道に乗った地点での生産台数は月産14台で、年間168台と新興メーカー
としては驚異的な生産台数で、結構イギリスで話題になっていたらしい・・・・

「トミタオートUK」のワーカーのほとんどが、ロータスの出身らしく、ロータスへ
の対抗心が、この生産台数に結び付いたのだと思う・・・・・

現地のワーカーの人達同様、日本のスタッフの人達も、「ZZ」を愛し、また、
それぞれに思い入れを持っていたのだろう・・・・・

04042

やはりクルマ造りにしろ、何にしろ、モノを造ると云う事は、人の心が入って
いなければいいモノは出来ないと、この「ZZ」に教えられた・・・!

|

« 車お宝話(97)「ZZ」の英国生産を決定する! | トップページ | 車お宝話(99)ポール・フレール氏と「ZZ」 »

1.クルマお宝話」カテゴリの記事

コメント

>やはりクルマ造りにしろ、何にしろ、モノを造ると云う事は、人の心が入って
いなければいいモノは出来ないと、この「ZZ」に教えられた・・・!

物に心がこもっていればきっと最高の一生を送れますよね!
日本には「付喪神」なんていわれるように物にも必ず心があるような考え方があるので、私もいつかそのようなものづくりがしたいですよ!


>トミタUK
工場規模すごい大きい施設なんですね・・・
ZZがミニカーに見える写真が。。。
ということはZZⅡ・ZZⅢ生産を見越した大きさにしてたんですよね?

>一台70時間
今の車の生産方式と大きく違うので、クラフトマンの意地が見えるというか。。。
ここで熟成してゆく自動車ってのもうらやましいですよね!
魂のこもった車。。。だからこそ今でも愛されている

投稿: あきら | 2008年10月29日 (水) 22時48分

人の心が入っていなければいいモノは出来ないと・・・
この気持ちがすべてだと思う・・・!

この気持ちを一人でも多くの人が共有することによって
いいクルマが出来るのですよ。


投稿: 富田義一 | 2008年10月30日 (木) 15時25分

同感です。自分はトミーカイラのプラモデルを自作で作っているのですが、時間をかけて苦労しながら完成させた物ほど出来上がった時に何とも言えぬ感動があり、うっとりと見入ってしまいます。今はオーナーさんの要望でM30ZとZZの製作をしてるのですが、完成した時に喜んでもらえる物を作りたい、喜ばしてあげたいと言う思いで作ってます。たかがプラモデルですが、物造りっていいものですよね。ZZのプラモデルを作ってて、人間、頭の中で想像できる物は現実に作り出すことができる!と思いました。モノコック、フレーム、ボディーをどう再現するか、頭の中で思いついたアイディアを再現すれば、多少の計算ちがいはあってもちゃんと完成できる。他のことでもそうなんじゃないかと思います。小さいけれど、自分の中のクラフトマンシップ、大切にしたいです。

投稿: 圭.夢工場 | 2008年10月31日 (金) 15時32分

そうですね~圭さん!
モノ造りは素直な気持ちでないといいものは出来ないですね・・・
しばらく会ってないですが、僕の友人で元日産の出身の森さんと云う人は、何でも造り出しますよ!
多分彼は日本の中でもトップクラスだと思いますが・・
初代のM30をその当時に頂きました、今でも大事に飾っていますよ・・・!
この世の中で自然以外のモノは、小さいモノも大きいモノも、皆人間が考えた事ですから・・・・・。
楽しみながら、いいモノを造ってください!

投稿: 富田義一 | 2008年11月 1日 (土) 11時56分

富田様、初めまして。
高尾と申します。現在トムス エンジェルを動態保存しております。
エンジェルとZZの事を、調べてる内に富田様のこの記事にたどり着きました。
エンジェルについて、ご存じの情報有りましたら、教えて下さい。

投稿: 高尾 政宏 | 2013年1月14日 (月) 10時53分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 車お宝話(97)「ZZ」の英国生産を決定する! | トップページ | 車お宝話(99)ポール・フレール氏と「ZZ」 »